色温度と黒体軌跡に関する説明

黒体軌跡はCIE xy色度図上の暗い赤の領域から始まり,白の領域を経て,青の領域で終わる色温度を結んだ曲線です.この曲線はマックス・プランク(Karl Ernst Ludwig Planck, a German physicist who lived from 1858-1947) にちなんでプランク軌跡とも呼ばれます.1900年,プランクは熱せられた物体から放射される光の分光分布を理論的に解析して,理想的な黒体は光の放射に関して,絶対温度とその放射の分光分布が1対1で対応するという,プランクの放射則とその数式を導きました.鉄を溶鉱炉の中に置くと,最初は鈍い赤い光を放射しますが,温度が高くなるにつれて赤―橙,白と色が変化して最後に青白い光を放出するようになります.同様に白熱灯の中のフィラメントも加える電圧とともに色が変化します.プランクの放射則は,また光源の相対的な色温度の指定にも使用されます.光源の色の特性を絶対温度(ケルビン)で表現することができます.ケルビン(K)スケールは通常私たちが使用するセルシウス(C)スケールと同じですが,-273.16セルシウス(C)が0としてスタートします.


プランク軌跡(黒体軌跡)


技術的には,色温度指定は白熱灯の光源にのみ有効で,プランク曲線に概ね一致します.しかし,照明のエンジニアたちは相関色温度として蛍光灯やHID,キセノンランプなどの常用光源などの白さの度合いを表しています.昼光ですらは正確にはプランク軌跡には乗っかっていません.太陽からの光の放射は途中で様々な物質により吸収や散乱を繰り返しプランクの放射則に完全にマッチした分光分布をしていません.ですから,色温度だけでは光源の特性をすべて言い表せるわけではないことに注意してください.たとえば,家庭で使用する白熱灯と暖色の蛍光灯を比べてみてください.どちらも3000Kの相関色温度を持っていたとしても,色の見え方は大きく違うことになります.


標準イルミナント

多くのCIE色度図の中心を通る黒体軌跡に加えて,A,B,CやD65のようにアルファベットや数値による組み合わせの指定があります.これはCIEやANSIを含む他のスタンダードコミッティによって指定されている標準イルミナントを表します.いわゆるCIEイルミナントはビジュアルや計測器による計算に使用される数値の参照モデルです.イルミナントの物理的シミュレーションは光源と呼ばれます.いくつかのイルミナントは実際の光源で実現することができますが,D65 やD50などは現実の光源で実現することができません.このため,常用光源として近似する光源を用いてこれを代用します.ちなみに,測色計の照明はイルミナントに準拠している必要はありません.測色計の照明は白色校正板で正規化されるため分光分布の特性は問題になりません.イルミナントはあくまでも色彩値を計算する際の照明の標準として計算に用いられます.