あなたがスーパーで,たくさんの新しいスナック菓子の中から1つ選ぶとしたらどのような基準で選択するでしょうか?特徴的で目に付くパッケージが大きく気を引くことは間違いないでしょう。
製品パッケージのカラーと素材はブランドが成功するための大きな鍵となります.近年,メタリック素材のようなパッケージが特に注目を集めています。 消費者にとっては魅力的なデザインですが,印刷会社にとってはコストが高く,色管理の難しいチャレンジングな仕事になります。
紙ベースの印刷では十分な品質のカラーマネージメントワークフローを構築していても,メタリック素材への印刷となると話が変わります。しかし,それはあなたの会社だけではありません。ベースとなる素材(基材)の反射特性が大きく異なる場合,その印刷・色管理のワークフローは必ずしも同じものではありません。 それでは,メタリック素材への印刷では一般的な印刷の色管理と,どこがどう違うのかを見てみましょう。
1. メタリック素材へ印刷する場合の3つの良くある間違い
間違いその1) 45/0測色計の使用
45/0の測色計ではミラー表面の色を正確に捕えることができません。
45/0は測定器の光学幾何条件,つまり,どの方向から光をサンプルに照射し,どの方向でサンプルの反射する色を捕らえるかという条件です.45/0はサンプルの法線(垂直)方向から45°の角度で照明し,0°の角度で受光することを意味します. 紙やフィルムへ印刷する多くの印刷現場では,45/0の測色計で正確な色品質の特徴を捉えることが可能です.これは,この測定方式がインキ膜内や紙(基材)で均等に散乱された光の代表的な一部を捉えて評価するためです.また,紙の印刷では,正反射方向の反射はサンプル表面からの反射が主で,照明の特性そのものが反射されるだけになります.一般的に人はこの方向を避けて色を評価します.しかしながらメタリック素材での印刷では,反射された光は正反射方向に集中し,45°方向からの照明ではサンプルの法線方向(0°方向)にはほとんど光が反射されません。 このため,メタリック素材へ印刷したサンプルを45/0の測色計で測定すると非常に暗い色(ほぼ黒)として測定されてしまいます。
さらにインキの色材濃度(原料の投入量)による複雑さも加わります.インキを追加で投入していくと,インキにより多くの光成分が吸収されます.インキの透明性のため,インキ内では光は部分的に吸収され,散乱は概ねベース素材(基材)によってもたらされます.このため,紙を使用した印刷では異なるインキの投入量でも結果が予測しやすいものとなりますが,メタリック素材の場合,この予測が大変難しいものとなります.
間違いその2) 白インキの先刷り
白インキを最初に印刷し,その上からインキをかぶせる.理論的には正しいやり方ですが,現実的には非常にコントロールの難しい印刷となります.なぜなら,この印刷方式の品質を左右する白インキの隠蔽能力を面内全体で均質に保つことはきわめて難しいからです。
間違いその3) 目視での品質評価
高反射素材の目視評価というのはほぼ不可能といえます.パッケージをある方向に持って目視評価したときOKの色が,横に向けたり,太陽光の下に持ち出して観察したりすると色が変化してしまいます.あなたの意見では合格で問題の無い色かも知れませんが, ブランドオーナーが同じようにサンプルを観察評価するとは限りません.最終的な色はお店の他のパッケージとマッチングがとれているでしょうか?
メタリック表面の色を管理するには,いつもとは違うワークフローを導入する必要があります.違うツールも必要になります
2. メタリック素材への印刷における3つのポイント
ポイント1) 積分球測色計の使用
45/0測色計とは異なり,積分球タイプの測色計では全ての方向からの反射光を補足し正確に測定します.このタイプの測色計のもうひとつのメリットはSCI・SCEという2つの異なる測定方式を利用できることにあります.(SCIはSpecular Includeを意味し,サンプルからの正反射光を含んだ全方向からの反射光測定を行います.また,SCEはSpecular Excludeを意味し, SCEから正反射光の成分を除いた,しかしながら,大きく見るとやはり全方向からの反射光測定を行います.)
多くのユーザーがこのSCIを使用してメタリック素材上の色を測定しています.なぜなら,金属というのは正反射方向に色の特性が反射されるためであり,また,この測定方法が最も安定した測定結果が得られるためでもあります.しかしながら,最近の積分球測色計には,さらにさまざまなフレキシブルで便利な機能や計算方式が採用されています.是非,SCI/SCEによる多彩な機能をチェックしてみてください.このような機能はまた,いずれかの機会にこのコーナーでご紹介したいと思います.
積分球測色計Ci64はメタリック素材上の色の判定に最適なツールといえます.
ポイント2) 基準色のデジタル化
紙の上の印刷同様,数値による色の管理により,間違いの入り込む要素をできる限り除いていきましょう.基準色をデジタル化することで全ての工場間で,また,クライアントとの間のコミュニケーションで生産色を正しく比較検討することが可能になります.
デジタルによる安定した基準が確定すれば,インキのレシピを合理的に確定することができます.このプレスレディーインキ(配合調整済みインキ)をセットすることで,調色担当者がプレス上でインキの振れを補正する必要がなくなります.このことはまた,プロセスの変動要素の評価を簡単にします.つまり,いつも同じインキが供給されているのであれば,変動要素はおそらくプロセス側ということに特定することができます.
ポイント3)ソフトウエアを使用した変動のモニターと管理
X-Rite ColorCertやColor iQCのようなソフトがプロセスの変動成分をモニター,トラッキングするうえで非常に役に立ちます.多くの場合,許容範囲や許容限界が品質管理者やブランドオーナーによって設定され,生産における色差(ΔE)の変動を簡単にすばやく確認することができるようになります.
数値的にモニタリングすることで色の変動の傾向を認識し,トラックし,把握することができます.ソフトウエアの使用は,さらにメタリック素材への印刷で目視では気が付きにくい以下の点を明確にします.
測定の一環として白色度を測定することで,下地白の品質を定義,管理することができるようになります.
- オーバーホワイトとオーバーブラックの測定により白の隠ぺい力を確認します.メタリック素材上の白の隠ぺい力は非常に重要で背後のメタリックをどれほど覆い隠す能力があるかをチェックします.
- インキ着色力の測定は,どこに問題があるかを明らかにします.色がばらついていますか?着色力の変動はインキの色材濃度(インキ膜厚)の問題ですか?着色力の測定は濃度測定だけよりも多くの情報をもたらします.
- SCIとSCEの比較により光沢のレベルを評価することができます.最近の積分球測色計ではSCIとSCEを同時に測定するため,ソフトウエアを使用したこれらの比較により光沢レベルをチェックすることができます.
メタリック素材のCi64による測定.上はSCIの測定による色で,下がSCEによる測定の色.SCIには正反射光の要素が含まれて測定しているため,下のSCEよりも明るくなっています.
メタリック素材への印刷は非常にポピュラーになってきていて,すぐには無くなりそうにありません.これらの3つのガイドラインを参考に高反射素材への印刷への品質管理にお役立てください.
By MARK GUNDLACH
Solutions Architect