演色とは、照明の光が物体色の色の「見え」に及ぼす影響を指します。
基準となる光(リファレンス)に対して、使用する照明下での色の「見え」の一致度を数値化した尺度を 演色評価数といいます。
演色評価方法には様々なものがありますが、一般的にはCIE13.3(1995)による演色評価数が利用されています。 試験色としては14色(日本では肌色を加えて15種類)の分光反射率が定義され計算に使用されます。
一般的に演色評価数として使用されるのはTCS01-08の中彩度8色で、この計算値がRaとして演色評価数として利用されています。
演色評価数Raの計算の流れは以下のようになります。
- 基準光をサンプル光の色温度によって決める
- サンプル光の相対色温度が5,000K以上の場合、対応する色温度のDイルミナントの分光分布
- サンプル光の相対色温度が5,000K未満の場合、対応する色温度のプランク放射の分光分布
(ISO3664では基準光はD50イルミナントに固定)
- CIE1960均等色空間でサンプル光のu,vと基準光のu,vとは異なるため、各色に対してVon Kriesの色順応補正を適用
- CIE1964均等色空間で基準光とサンプル光のW*、V*、U*を算出
- CIE1964均等色空間で各色の色差(基準光とサンプル光)を算出
- 各色の特殊演色評価数を算出Ri=100-4.6ΔE (4.6は温白色蛍光灯でRa=50になるよう決定)
- 8色の算術平均を計算してRaとする
このように演色評価数の計算は意外とめんどくさくて、エクセルなどでの計算も結構面倒です。
この演色評価数は照明の演色評価の代名詞となって広く利用されていますが、以前からその欠点も多く指摘されています。
例えば、中彩度のサンプル色を使用した評価で、鮮やかな色の演色性に関して正しい評価が得られない。 また、もともと滑らかな分光分布を持つ照明やピークの少ない照明を意図して開発されているため、
近年のLEDの演色性評価には向かないといった指摘があります。
このため、照明の演色性を評価する際は平均演色評価数のRaだけではなく、特殊演色評価数のRiにも注目することをお勧めします。 特にTCS09の赤のRiはRaの高い照明でも低い値を示すものがあるためチェックしてみてください。
また、下のような照明光でのサンプル色の色域を示すカラーベクターグラフで、基準光とサンプル光を比較してみるのも参考になると思います。
これ以外にも、新しいタイプの演色評価インデックを参考にしてみる方法もあります。
例えば、CQS(Color Quality Scale)、CRI 2012、TM30-18などよりモダンな照明に対する評価に適した演色評価インデックスを活用する方法もあります。
このへんのインデックスについても、後日取り上げてみたいと思っています。
参照光が昼光(デイライト)のD50、D55、D65、D75の場合、照明光がこれらの参照光にいかに近似するかを確認するには、演色評価数以外に条件等色指数が照明選択の良い指標になります。
次回は、この条件等色指数について説明したいと思います。
おすすめの参考資料
-
23. 印刷物とプルーフを比較する照明はどう選ぶ?|カラーエキスパートブログ
色を評価するために照明、印刷物の色品質確認としてのビューイングブースについて説明します。
-
25. さまざまな演色評価インデックス|カラーエキスパートブログ
様々な新しい照明の演色評価用のインデックスについて説明します。
-
測色入門ウェビナー|オンデマンドウェビナー
本ウェビナーでは、色の数値管理・デジタル化による品質管理について、測色計や標準光源装置の導入にあたって必要な知識をゼロからお伝えします。
-
積分球、45:0、多角度の分光測色計を正しく 選択する方法をご紹介:産業用途例|ホワイトペーパー
本書では使用目的に合わせて、積分球、45:0、多角度の分光測色計を正しく選択する方法を紹介しています。
-
自然光に関する誤解を解く:技術概要|ホワイトペーパー
色評価に際して知っておくべき自然光シミュレーションに関する4つの通念と誤解について、ご説明します。
-
花王株式会社の導入事例|ユーザー導入事例
花王株式会社は、色の数値管理による商品パッケージ印刷の承認プロセスを確立し、印刷立会を削減するとともに、平均3ヵ月を要していた業務を約1ヵ月に短縮させています。
関連製品一覧
標準光源装置 SpectraLight QCフィルターを使用するタングステン・ハロゲン昼光と LED オプションを含む 7 つの光源により、正確な昼光を再現し、効果的な目視評価をサポートします。 |
標準光源装置 Judge QCこのコンパクトで軽量な照明装置は、LED オプションを含む 5 つの光源を用いて、小型サンプルの色を正しく管理された照明下で評価します。 |
観察条件をカスタマイズ Harmony Roomハーモニールームは SpectraLight QC 照明装置を装備。カスタム設定された昼光シミュレーション機能を用いて、大型部品や組立品、複数の製品を並べ、効果的な目視評価を行います。 |
お問い合わせや、無料相談・無償機材貸出・製品見学会のお申込はこちら