36. 色差許容値の決め方

Posted August 23, 2022 by X-Rite Color

生産する製品の色彩管理を行う場合、基準色に対する色差による数値での合否判定を実施します。
この合否判定を行うための閾値となるのが色差許容値です。

下図はColor iControlで基準色からの色差を基準として合否判定をしたグラフです。

色差許容値の決め方

色彩管理を行う場合、この色差許容値をどの程度にとればよいかが問題となります。
今回は、この色差許容値の決め方について説明します。

許容値の決め方は製品の品質と生産効率に直接影響するため、なるべくビジュアル評価との相関の取れた 許容値設定が望まれます。 ビジュアルの合否判定と相関性が取れるよう許容値を設定するためには、以下の例のような生産色の測定値と ビジュアル評価によるテストを実施し、視感的均衡点による許容値決定方法を使用します。

ビジュアル評価で大事なことは、ビジュアル評価の標準化です。
評価光源にはSPL QC(D65昼光照明)のような標準光源を使用します。
サンプルと基準色は同じ大きさ(できれば5cmx5cm程度)に揃え、横並びに接触させて(隙間を作らず)評価します。
必要に応じて、許容範囲を明示するグレーパッチのアンカーペアを判定に用います。

各サンプルのビジュアル評価結果と、測定色差をリスト化します。
<測定色差とビジュアル評価結果>

サンプル名 ΔL* Δa* Δb* ΔE76 ビジュアル評価
サンプル#1 -0.56 0.1 0.5 0.76
サンプル#2 -0.56 0.1 0.5 0.76
サンプル#3 -2.04 0.06 -0.28 2.06
サンプル#4 1.52 -0.04 0.54 1.61 X
サンプル#5 0.04 0.08 0 0.09
サンプル#6 0.14 -0.08 -0.2 0.26
サンプル#7 0.12 -0.04 -0.06 0.14
サンプル#8 -1.12 -0.06 -0.66 1.30
サンプル#9 0.56 -0.12 -0.44 0.72
サンプル#10 -0.64 0.02 -0.18 0.67
サンプル#11 0.46 0.18 1.04 1.15
サンプル#12 1.22 0.16 1.28 1.78
サンプル#13 -2.54 0.06 -0.42 2.58 X
サンプル#14 0.2 0.16 1.38 1.40
サンプル#15 0.46 -0.02 0.24 0.52
サンプル#16 2.9 -0.08 1.48 3.26 X
サンプル#17 -2.48 0.1 1.54 2.92 X
サンプル#18 1.06 0.1 0.5 1.18
サンプル#19 2.18 0.02 0.7 2.29
サンプル#20 4.18 -0.04 1.02 4.30 X
サンプル#21 4.84 0.26 2.48 5.44 X
サンプル#22 2.96 0.14 1.48 3.31 X
サンプル#23 3.32 0.12 0.82 3.42 X
サンプル#24 -0.88 0.06 -0.44 0.99
サンプル#25 2.76 0.12 0.76 2.87 X
サンプル#26 2.8 0.02 0.58 2.86 X
サンプル#27 0.72 0.08 0.04 0.73
サンプル#28 0.86 0.24 2.14 2.32
サンプル#29 -0.2 0 -0.56 0.59
サンプル#30 0.28 0 -0.1 0.30
サンプル#31 1.28 0 -0.26 1.31
サンプル#32 0.8 -0.1 0 0.81
サンプル#33 0.78 -0.04 -0.48 0.92
サンプル#34 1.26 -0.12 0.38 1.32 X
サンプル#35 3.42 -0.16 0.5 3.46 X
サンプル#36 -1.56 -0.12 -0.74 1.73 X
サンプル#37 -2.6 0.02 -1 2.79 X
サンプル#38 4.48 -0.16 0.82 4.56 X
サンプル#39 -0.36 -0.1 -0.38 0.53
サンプル#40 -0.14 -0.04 0.02 0.15
サンプル#41 0.1 -0.14 -0.08 0.19

結果をビジュアル評価に合格したサンプルと不合格になったサンプルに分類し、測定色差の順に並べ替えます。
次に、合格、不合格の各サンプルに対して累積%を計算します。
累積%は次のように計算します。

色差許容値の決め方
色差許容値の決め方
<合格サンプル累積%>
  ΔL* Δa* Δb* ΔE76 ビジュアル評価 合格累積%
サンプル#5 0.04 0.08 0 0.09 96%
サンプル#7 0.12 -0.04 -0.06 0.14 92%
サンプル#40 -0.14 -0.04 0.02 0.15 88%
サンプル#41 0.1 -0.14 -0.08 0.19 85%
サンプル#6 0.14 -0.08 -0.2 0.26 81%
サンプル#30 0.28 0 -0.1 0.30 77%
サンプル#15 0.46 -0.02 0.24 0.52 73%
サンプル#39 -0.36 -0.1 -0.38 0.53 69%
サンプル#29 -0.2 0 -0.56 0.59 65%
サンプル#10 -0.64 0.02 -0.18 0.67 62%
サンプル#9 0.56 -0.12 -0.44 0.72 58%
サンプル#27 0.72 0.08 0.04 0.73 54%
サンプル#1 -0.56 0.1 0.5 0.76 50%
サンプル#2 -0.56 0.1 0.5 0.76 46%
サンプル#32 0.8 -0.1 0 0.81 42%
サンプル#33 0.78 -0.04 -0.48 0.92 38%
サンプル#24 -0.88 0.06 -0.44 0.99 35%
サンプル#11 0.46 0.18 1.04 1.15 31%
サンプル#18 1.06 0.1 0.5 1.18 27%
サンプル#8 -1.12 -0.06 -0.66 1.30 23%
サンプル#31 1.28 0 -0.26 1.31 19%
サンプル#14 0.2 0.16 1.38 1.40 15%
サンプル#12 1.22 0.16 1.28 1.78 12%
サンプル#3 -2.04 0.06 -0.28 2.06 8%
サンプル#19 2.18 0.02 0.7 2.29 4%
サンプル#28 0.86 0.24 2.14 2.32 0%
 
<不合格サンプル累積%>
  ΔL* Δa* Δb* ΔE76 ビジュアル評価 不合格累積%
サンプル#34 1.26 -0.12 0.38 1.32 X 7%
サンプル#4 1.52 -0.04 0.54 1.61 X 13%
サンプル#36 -1.56 -0.12 -0.74 1.73 X 20%
サンプル#13 -2.54 0.06 -0.42 2.58 X 27%
サンプル#37 -2.6 0.02 -1 2.79 X 33%
サンプル#26 2.8 0.02 0.58 2.86 X 40%
サンプル#25 2.76 0.12 0.76 2.87 X 47%
サンプル#17 -2.48 0.1 1.54 2.92 X 53%
サンプル#16 2.9 -0.08 1.48 3.26 X 60%
サンプル#22 2.96 0.14 1.48 3.31 X 67%
サンプル#23 3.32 0.12 0.82 3.42 X 73%
サンプル#35 3.42 -0.16 0.5 3.46 X 80%
サンプル#20 4.18 -0.04 1.02 4.30 X 87%
サンプル#38 4.48 -0.16 0.82 4.56 X 93%
サンプル#21 4.84 0.26 2.48 5.44 X 100%

横軸を測定色差、縦軸をそれぞれの累積%にとったグラフにプロットします。
青のラインが合格累積%を表し、オレンジのラインが不合格累積%を表すラインです。

色差許容値の決め方

このラインがクロスするポイントがPSE:主観的均衡点となり、この点を許容値として使用します。 この例ではΔE76=1.6を許容値に設定することになります。

また、このサンプルでは1.3 <ΔE76< 2.3の領域はビジュアル判定の合否が入り混じる不確定範囲となります。 例えば、測定値がこの領域になった場合、ビジュアル判定を併せて実施するなどの運用をとることも可能です。

今回の例ではΔE76を測定色差として使用しましたが、視覚とのより相関性の良いΔE2000などを使用することでよりビジュアル評価との相関の取れた色差許容値設定が可能になります。

おすすめの参考資料

  • 17. 色差についてカラーエキスパートブログ

    色差についてのブログです。産業の世界では色彩値そのよりも色と色の差、色差のほうが重要になります。如何に基準の色に近い色を生産するかに関心があるからです
  • 19. 色差計、色彩計、分光計って何が違う?カラーエキスパートブログ

    色差計、色彩計、分光計の違いについてのブログです。色の測定器、測色計に関して少し説明していきます。
  • 測色入門ウェビナーオンデマンドウェビナー

    本ウェビナーでは、色の数値管理・デジタル化による品質管理について、測色計や標準光源装置の導入にあたって必要な知識をゼロからお伝えします。
  • 分光測色計の選択:金属印刷(メタルデコ)ホワイトペーパー

    本書では、金属印刷(メタルデコ)に対して、積分球分光測色計と 45/0 分光測色計を比較し、使用目的に適した装置を選択する方法を説明 しています。。

関連製品一覧

品質管理ソフトウェア Color iQC

Color iQC

Color iQC ソフトウェアは、デザインコンセプトが最終製品にまで忠実に維持・反映されるよう、カラーワークフローの重要な役割を果たします。

ポータブル積分球分光測色計 Ci64

Ci64

エックスライト社の最も精密なポータブル積分球分光測色計 Ci64は、正反射光込み/除去の同時測定、相関光沢、UV 機能(Ci64UV)が備わった 3 つのモデルからお選びいただけます。

非接触イメージング分光測色計 MetaVue™ VS3200

VS3200

MetaVue™ VS3200 は、濡れた状態、乾燥した状態に関わらず、プラスチック、化粧品、小型、変形サイズなど、多様なサンプルを正確に測定します。.

お問い合わせや、無料相談・無償機材貸出・製品見学会のお申込はこちら