今回から、何回かにかけて、色を評価するために照明、ビューイングブースについて説明します。
まずは、印刷物の色品質確認としてのライティングについてから始めてみます...
印刷物の色評価としてはプルーフとのビジュアル比較が最も重要なポイントとなります。
最近では蛍光灯からLEDへの移行が加速する中、どのようなポイントで観察照明を選択するべきかについて解説します。
最も考慮すべき点は、今日のプルーフはデジタルプルーフが主流となっている点です。
デジタルプルーフは、実際の印刷物とは色材が異なるためどの照明条件でも色がマッチングするわけではありません。
デジタルプルーフは決められた照明条件のもとでのみ実際の印刷物とのカラーマッチングが約束されているのです。
ではその照明条件とはどのような条件でしょうか?
簡単に言えば、D50の照明条件ということになりますが、D50は数値定義された測色用の光なのでこれを実現する常用光源(デイライトシミュレータ)は存在しません。
では、現実的にどのような照明が必要になるのでしょうか?
ISO3664では、印刷物とプルーフを評価するための照明条件として以下の項目を満たすことを挙げています。
参照イルミナント | D50 |
色度許容範囲 | 0.005 |
照度 | 2000±500 lx 推奨:2000±250 lx |
演色評価数 Ra(8色平均) | 90以上 |
演色評価数 Ri(8色個別) | 80以上 |
条件等色指数 (ビジュアル) |
C以上 推奨:B以上 |
条件等色指数 (UV) |
1.5以下 推奨:1以下 |
面内バラツキ (min:max) 1m x 1m 範囲外 |
0.75以内 |
面内バラツキ (min:max) 1m x 1m 範囲内 |
0.6以内 |
周辺反射輝度率 | 60%未満 無彩色マット |
印刷物とプルーフとの比較観察照明としてはこれらの条件をまんべんなく満たす必要があります。 一般に、評価用の照明(標準光源)を選定する際の基準としては演色評価数が大きく取り上げられます。 ただ、演色評価数のRaのみに注目して、「この照明は95以上だから十分だ」とか、「こっちの照明は演色評価数はRa=98で、こっちが90だから、Raの高い98 の標準光源にしよう!」といった選択が見受けられます。
演色評価数のRaは8つのカラーサンプルの演色性をリファレンスのD50と使用する照明で比較した色差を平均したものです。 このRaに使用される評価用サンプルは当時の照明メーカーによって提出されたサンプルで、どちらかというと蛍光灯の評価に適しています。 今日のLEDが主流となりつつある光源の評価では意外な落とし穴、つまり演色評価数が高くても印刷の正しい色評価に適さないケースが少なくありません。
照明の選択には、このような一面的な評価による選択ではなく、ISO3664のガイドライン全般の指標を使用した評価で選択することをお勧めします。 特に、条件等色指数(ビジュアル)は重要な項目になります。この指標は使用する照明がいかにリファレンスのD50にマッチしているかを示すインデックスになっています。 この指標が高ければ、その照明の分光分布はよりD50の分光にマッチしているということを意味します。
では、実際にこのISO3664への適合を総合的に評価するにはどうすればよいのでしょうか?
お手持ちのi1PROもしくはi1PRO2が環境光測定モジュールをサポートしている場合、市販のサードパーティーのツール(Babel Color社製 CT&A: http://www.babelcolor.com/)を使って簡単にISO3664の適合を評価することができます。
(条件等色指数(UV)を除く)
下図のように標準光源装置の評価場所で測定するだけで、必要な項目(条件等色指数(UV)を除いて)の合否判定が一発で確認できます。
D50 への分光分布のマッチングだけでなく、照度や色度、平均演色評価数(Ra)、個別演色評価数(Ri)、条件等色指数(ビジュアル)、面内バラツキなどの評価を簡単にチェックできるようになっています。
Babel Color CT&AのISO3664適合確認画面
*Babel Color CT&AはX-Rite製品ではありません。
また、蛍光増白剤の入った印刷本紙を使用する場合は、条件等色指数(UV)にも注意が必要です。
この指標が高ければ照明のUV光量がD50のそれと近似することを意味します。
eXactやi1を使用したカラーマネージメントで、M1ワークフローを構築する場合には、この条件等色指数(UV)が1.5以内のものを使用することぉお勧めします。
(注意:この条件等色指数UVはBabel Color CT&Aではサポートされていません。)