今回は濃度から派生する印刷品質の代表的な管理指標であるドットゲインについて説明します。
印刷という色再現方式は1つ1つのドットには諧調が無く、プロセス印刷の場合、色の要素はCMYKの各インキ色(1次色もしくはプライマリーと呼びます)と用紙色およびその重ね合わせのRGB色(2次色といいます)で固定されます。
そして、各ドットのサイズを小さくしておいて、十分離れた位置から見たときにドットの集合がフルカラーを再現するという並置加法混色の色再現になります。
ですから、このドットのサイズや個数による領域のカバー率を正しくコントロールすることが重要になります。
印刷の場合、さまざまな印刷方式はありますが、どんな方式でも色材を用紙(基材)に押し当て圧力をかけます。このため色材は潰れて広がります。
つまり、印刷されたドットは版上で作成したサイズよりも大きくなります。 この大きくなる度合いをキチンとコントロールしなければ、諧調表現が定まらなくなり、安定した 印刷品質を実現できなくなります。この意味でドットゲインは印刷の重要な指標となっています。 ベタ濃度や2次色が基準どおりに印刷されていてもドットゲインが基準から外れた場合諧調表現が変化し印刷されたイメージの色再現が変わってきます。(図-13 を参照)
低いドットゲイン
標準のドットゲイン
高いドットゲイン
図-13 ドットゲインの違いによる影響
図-14にISOのオフセット向けドットゲインカーブを示します。
これらはCTPに対応したドットゲインカーブになっていて、コンベンショナルなアミ点ではコート紙でAもしくはB
上質でBもしくはCが推奨されています。またFMなどの非周期スクリーンではEのように高いドットゲインが用いられます。
図-14 ISOのオフセット用ドットゲインカーブ
ちなみにJapan Color認証ではコート紙で名目50%のドットで14%のドットゲインが基準として指定されています。
本来、ドットゲインは印刷機のキャリブレーションのための指標なので、常に安定した値に管理されれば、これらの値に固執しなければいけない理由はありません。
しかし、印刷機の場合、プロファイルなどを適用しなくても(素の状態で)Japan Colorなどの標準の状態に近いことが望まれます。
このため、ドットゲインの値も業界標準に合わせておくことがよりスムーズなワークフロー構築のために重要になります。
ちなみに、ISOではデジタル印刷など必ずしもドットを使用しない印刷方式も視野に入れ、ドットゲインという用語は使用せず代わりにTVI(トーン・バリュー・インクリース)という用語を使用するようになっています。
今回取り上げたドットゲインは見た目のドットゲイン、ビジュアルドットゲインに関して説明しました。
このドットゲインの値はマレイ・デイビスという測定方式で測定されます。
次回は、このビジュアルドットゲインと、もう1つの メカニカルドットゲインの違いを説明したいと思います。
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