今回はビジュアルドットゲインとメカニカルドットゲインの違いを説明します。
まず、印刷の仕上がり、諧調再現をチェックするのはビジュアルドットゲインの役目になります。
ドットゲインは印刷時の印圧などにより、基材(用紙)上の色材が押しつぶされて物理的な太り(広がり)が発生しますが、基材上のドットにはこれ以外にも光学的な太りの要素が存在します。
図-15に示すように、本来は紙の領域によって反射される光などが、用紙内にもぐりこみ、インキの下にトラップされて反射されず、結果として諧調性が暗い方向にシフトします。
そのほかにも照明がインキの厚みによってできる影(エッジロス)によっても微少ながら諧調が暗くなります。
このような光学的な影響を「インキが太った」分に繰り込んでドットゲインとして勘定したものを光学ドットゲインと呼びます。
「物理的な太り」とこの擬似的な「光学的な太り」をあわせたものがビジュアルドットゲインとなります。
図-15 照明光のもぐりこみによる光学ドットゲイン
一方、物理的なドットゲインのことをメカニカルドットゲインと呼びます。これは純粋にドット領域の太り量を指します。 印刷機の印圧の調整やCTP版での印字領域のキャリブレーションチェックなどに利用されます。
図-16の例をとると、プレート上で50%のドットサイズ(デザインの際のドットサイズ)が印圧などで用紙上で物理的に太り、このメカニカルドットゲイン分が6%、
さらに光のもぐりこみなどによる光学的なドットゲインが8%上乗せされトータルのビジュアルドットゲインは6%+8%で14%ということになります。
最終的に50%でデザインされた諧調が64%のドットとして再現されたということになります。
図-16 ドットゲインの積み重ね
50%で意図したサイズが64%に印刷されたということで、なんだか間違えて印刷されたように印象がありますが、これは、これで問題ありません。 ドットゲイン管理は諧調のキャリブレーションなので基準どおりにコントロールされていることが重要になります。 たとえばJapan Colorの標準印刷では名目50%のドットは14%のビジュアルドットゲインを持つことが正解なのです。